この道場で共に汗を流すことによって何を学び、時には苦しみながらも何処に向かい・辿り着くことが出来るのか。
いわゆる『強さ』と『道徳』です。
道場社会において少年・少女たちは痛みを伴う厳しい稽古を通じて汗を流し、少しずつ強く鍛えあげられていきます。
入門した当初は誰もが余り深くは考えずに、目の前の昇級審査を乗り越えて、まずは分かりやすく帯の色を変えていきます。
しかしながらその分かりやすい色の変化は自身の道場における立場を明確に表し、その帯色の責任を背負いながらも少しずつ高いものとなっていることを自負し、『自信』を身につけて行きます。
また痛みを伴い『納得した上で道徳を学ぶ』ことによって得る『気をつけ』の意識が自らの方向性を真っ直ぐなものに正し、さらには(帯の色が高いレベルのものに進んで行くとともに)小論文などの課題を通じて、自らの生き方に対して深く考えることとなります。
強さを身につけたことによる『自信』は学校社会において委縮することなく伸びやかにその存在を輝かせるものとなって行きます。
もちろん周囲からの印象も変化していき、何かと『直接的』に主張をぶつけ合うことの多い学校社会においても 「あの人は何か強いものを持っている」 と、その強さからなる存在感は言葉や行動など無くとも、雰囲気から滲み出ていき大きなものとなっていきます。
その存在感の大きさは心にゆとりを持たせ、些細な争いを遠ざけ、自己の存在を護ります。
また、より良好な人間関係を築くことを助けるものとなることでしょう。
『求められる立場(リ-ダ-的立場)』に実際に立ち、そしてその『立場』を背負いながら目前の課題に奮戦奮闘し、『信頼』から与えられた役割を全力で果たす気概を見せる。
少しでも周囲から得た『信頼』に応えることにより、その『信頼』は厚みを増し、自己に対する個人的な『自信』から(周囲からの評価を背景とする)学校社会に置ける立場に対する『自信』となり、学校生活が充実したものとなりその存在感を大きく輝かせることとなるでしょう。
そして
「こんな自分でも将来、世の中に対して何か良いことが出来るかもしれない」
と思える様な経験を踏むことが、彼らが学校社会から巣立った後の活動の場となる実社会に向けての『夢』を探し選択することの手がかりとなり、『志(こころざし)』を立てることに繋がることになれば、実社会での生活をも輝かせる可能性があるのではないでしょうか。
黒・茶帯といった道場社会における上級者同士ともなれば、少なからずとも(お互い何年も道場に通い、切磋琢磨して培われた)共感性からなる『同門意識(ライバル関係も含む)』があると思われます。
『強さ』と『道徳』を学ぶ者たち(道場生)が環境を作り、
空手道青少年育成武道教育学舎の理念が9年の歳月を経てようやく『路線のレール』のように少しずつ、はっきりと明確になってきました。
その行先・方向性は、『厳しい当てる空手』によって叩き上げられながら『道徳』を学んできた若者が、まず人として前向きに強く生きて自らの人生を幸せなものとする。
そのように生きながらも『道(徳)』を見据えて仲間を大切にし、仲間・社会から 『信』を得る。
そして人々が幸せに生きたいという願いを担い背負うことをいとわない、
この『正道のレール』が未来に向けて明るい方向に力強く真っ直ぐに延び続けて、今後も多くの青少年を乗せてその方向に導くものになることを心より期待し願っております。
2015年12月 第24回審査会 『冬季昇級審査会』を終えて 空手道青少年育成武道教育学舎 代表 岡本 衛 |